兵庫県赤穂市で、市役所に勤務する非正規職員約130人が2027年3月末で再任用されない見通しとなり、大きな注目を集めています。

なぜ、これほど多くの職員が一度に仕事を離れることになるのでしょうか。

背景をたどると、赤穂市役所だけの人員整理ではありません。

赤字経営が続いてきた赤穂市民病院が2027年4月から指定管理者制度へ移行し、病院に勤務する正規職員104人が市役所への転任を希望したことが大きく関係しています。

市役所では、この104人を受け入れるための人員配置を進めることになりました。

その結果、現在働いている会計年度任用職員のうち、主に事務職を担う約130人を次年度に再任用しない方針となっています。

つまり今回の問題は、赤穂市民病院の経営改革、市役所への職員異動、非正規職員の再任用という3つの話がつながって起きています。

数字も複数登場するため、何があったのか分かりにくいと感じた人も多いでしょう。

ここでは、赤穂市民病院から市役所へ異動する理由はなぜなのか、非正規約130人の再任用が見送られる背景とともに整理します。

赤穂市民病院から職員104人が市役所へ異動する理由はなぜ?

赤穂市民病院から104人の正規職員が市役所への転任を希望した最大の理由は、2027年4月に病院の運営形態が変わるためです。

赤穂市民病院は現在、赤穂市が運営する公立病院です。

しかし2027年4月1日からは、医療法人伯鳳会が指定管理者として病院運営を担当します。

指定管理移行後も病院自体は公立病院として残りますが、実際に新病院で勤務する職員は伯鳳会に採用される形になります。

そのため、現在の市職員としての身分をそのまま維持して病院で働き続ける仕組みではありません。

赤穂市は病院職員に対し、今後どの道を希望するか意向調査を行いました。

  • 伯鳳会に再就職して病院に残る
  • 公務員として市役所へ転任する
  • いずれも希望せず退職する

最終的に508人を対象とした調査では、274人が病院への残留を希望しました。

一方で104人が公務員として市役所への転任を希望しています。

市役所へ異動する104人については、病院から突然追い出されるというより、経営形態変更に伴って本人が公務員として残る道を選択したと考えるのが正確です。

104人はなぜ伯鳳会に残らず市役所への転任を選んだ?

104人それぞれが市役所への転任を選んだ個人的な理由までは公表されていません。

そのため、給与や待遇など特定の理由を一律に断定することはできません。

ただし制度上、大きな違いとなるのが公務員としての身分です。

指定管理移行後の病院で働くには、いったん現在の市職員という立場を離れ、伯鳳会に再就職する形になります。

これに対して市役所へ転任すれば、引き続き赤穂市の正規職員として勤務できます。

長期間、公務員として働いてきた職員にとって、今後の働き方を決める大きな選択だったことは想像できます。

ただし、104人全員が同じ理由で転任を希望したとする情報は確認されていません。

赤穂市民病院はなぜ指定管理者制度へ移行する?

今回の一連の人事を理解するには、赤穂市民病院の厳しい経営状況を見る必要があります。

病院が公表している経営状況によると、2025年度の1日平均入院患者数は178.9人でした。

2016年度の253.8人と比べると、10年間で74.9人減少しています。

外来患者数も同様です。

2025年度の1日平均外来患者数は529.1人で、2016年度の767.1人から238人減少しました。

患者数の減少は、そのまま病院収益にも大きく影響します。

さらに、医師や看護師の不足、人件費、物価上昇なども経営を圧迫してきました。

現在の市単独による経営方式を続けることが難しくなり、指定管理者制度への移行が進められることになったのです。

赤穂市民病院の赤字はいくら?経営悪化の理由を調査

病院が公表している2025年度の経常収益は75億5,900万円です。

2016年度の87億6,900万円から、10年間で12億1,000万円減少しています。

一方、2025年度の経常費用は84億4,700万円でした。

純損益は8億9,700万円の赤字となっています。

しかも、この数字には市の一般会計から投入された赤字補てんの9億円が含まれています。

病院によると、その9億円を除いて計算した場合、実質的な赤字は17億9,700万円となります。

現預金残高に対して一時借入金も膨らみ、資金面でも非常に厳しい状況です。

病院側は、現在の経営水準が続いた場合、2027年度から2036年度まで各年度25億円から33億円の純損失が生じる可能性があるとしています。

こうした数字を見ると、今回の指定管理への移行が単なる組織変更ではないことが分かります。

指定管理者の伯鳳会とは何?赤穂中央病院との関係

2027年4月から赤穂市民病院の指定管理者となるのが、医療法人伯鳳会です。

伯鳳会は赤穂市内で赤穂中央病院を運営しています。

赤穂市議会では2026年7月30日、伯鳳会を赤穂市民病院などの指定管理者とする議案が可決されました。

翌7月31日には赤穂市と伯鳳会が指定管理者基本協定を締結しています。

指定期間は2027年4月1日から2037年3月31日までの10年間です。

すでに候補という段階ではなく、指定管理者として正式な手続きが進んでいます。

赤穂市民病院と赤穂中央病院はどうなる?経営統合の内容

今回の再編では、赤穂市民病院だけが変わるわけではありません。

伯鳳会が運営する赤穂中央病院との機能再編も行われます。

赤穂中央病院が担ってきた外来や急性期医療などの機能を、新しい市民病院側へ集約する方向です。

一方、赤穂中央病院は療養型を中心とした機能へ移行します。

限られた医療従事者や病床を2つの病院へ分散させるのではなく、役割を整理する狙いがあります。

赤穂市、伯鳳会、地域の医療関係者は病床数や診療機能などについて協議を重ねています。

赤穂市民病院は閉院する?公立赤穂中央市民病院へ名称変更

指定管理者制度へ移行すると聞き、赤穂市民病院そのものが閉院すると受け取った人もいるかもしれません。

しかし、現在公表されている計画は病院をなくすという内容ではありません。

2027年4月1日から、現在の赤穂市民病院は「公立赤穂中央市民病院」という名称になります。

所在地は現在と同じ赤穂市中広です。

公立病院として施設を維持しながら、運営を医療法人伯鳳会へ任せる形になります。

そのため、「完全な民間病院になる」という説明も正確ではありません。

公設の病院を民間の医療法人が運営する仕組みと理解すると分かりやすいでしょう。

赤穂市役所の非正規職員約130人が雇い止めになる理由はなぜ?

ここで問題となるのが、市役所で現在働いている会計年度任用職員です。

赤穂市では正規職員と会計年度任用職員を合わせて約1,100人が勤務しています。

このうち会計年度任用職員は約550人です。

病院から104人の正規職員が市役所へ転任すると、市役所側では一気に職員が増えることになります。

特に転任者の大半は、市役所で事務職として配置される予定です。

そのため、現在事務などを担当している会計年度任用職員のポストと重なる部分が出てきます。

市は資格が必要な職種などを除き、事務職を中心とした約130人について2027年度は再任用しない方針です。

病院改革によって生じた正規職員の配置先を確保する一方、市役所側の非正規職員が人員調整の対象となった構図です。

雇い止め対象の130人は誰?会計年度任用職員約550人の一部

市役所で働く会計年度任用職員約550人の全員が再任用されないわけではありません。

対象となるのは主に市役所で事務を担当している職員です。

保育士や幼稚園職員など資格を必要とする職種は対象から除かれています。

正規職員では代替しにくい短時間勤務の職員なども除外されると報じられています。

最終的に約130人が2027年度に再任用されない見通しです。

市によると、この約130人は会計年度任用職員全体のおよそ2割に当たり、ほとんどが女性とされています。

病院の退職希望130人と市役所の雇い止め130人は同じ人?

今回、特に間違えやすいのが「130人」という数字です。

実は、別々の130人が登場します。

区分 人数 内容
病院職員 130人 病院残留も市役所転任も希望しない退職希望者など
市役所の会計年度任用職員 約130人 2027年度に再任用されない見通しの職員

病院側の130人と、市役所側の約130人は同じ人物ではありません。

病院の意向調査では、274人が残留、104人が市役所への転任、130人が退職希望などとなっています。

一方の約130人は、すでに市役所などで働いている会計年度任用職員です。

同じ人数が報道に登場するため、ここは分けて理解する必要があります。

約140人から約130人に変わったのはなぜ?

2026年7月の段階では、市役所の会計年度任用職員について「約140人を再任用しない」とする報道もありました。

その後、8月20日の報道では約130人とされています。

いずれも資格職や正規職員では代替しにくい職種を除いた人数として伝えられています。

ただし、確認できる公表情報だけでは、約140人から約130人へ変わった詳しい理由までは明らかになっていません。

人員配置の精査などが行われた可能性は考えられますが、ここは断定できません。

最新の報道に基づけば、現時点では約130人と理解するのが適切です。

会計年度任用職員とは何?任期1年の地方公務員

会計年度任用職員とは、地方公務員法に基づいて一会計年度を超えない範囲で任用される一般職の地方公務員です。

名前の通り、年度を単位として任用される仕組みになっています。

一般的には4月1日から翌年3月31日までが一つの区切りとなります。

赤穂市でも過去の会計年度任用職員募集で、能力実証などの結果が良好な場合に再度任用される可能性があると案内していました。

重要なのは「再度任用される可能性がある」という点です。

一度採用されれば毎年自動的に契約が続く制度ではありません。

今回の約130人についても、2027年3月末の任期満了後に次年度の任用を行わないという形になります。

赤穂市の非正規130人雇い止めは違法なのか?

ネット上では「これは違法ではないのか」という疑問も見られます。

ただし、今回のケースについて違法か合法かを外部から一律に断定することはできません。

会計年度任用職員は、一会計年度を超えない範囲で任用される制度です。

年度をまたいで自動的に任用が継続する一般的な無期雇用とは仕組みが異なります。

そのため、任期満了と次年度の再度任用を分けて考える必要があります。

一方で、同じ職場で長く再任用を繰り返してきた職員にとって、突然仕事を失う影響が非常に大きいことも事実です。

個別の任用条件やこれまでの経緯、手続きがどうだったのかによって法的評価も変わる可能性があります。

「年度末だから何をしても問題ない」と単純化するのも、「必ず違法だ」と決めつけるのも避けるべきでしょう。

市役所へ異動する104人の仕事内容はどうなる?

病院から転任する104人の大半は、市役所で事務職として配置される予定と報じられています。

病院では医療現場や病院運営に関連する仕事に携わってきた人もいるため、新しい部署では仕事内容が大きく変わる可能性があります。

市役所側も100人を超える職員を一度に受け入れることになります。

部署への配置や業務の引き継ぎ、研修なども大きな課題になるでしょう。

ただし、104人一人ひとりの具体的な配属先は現時点で公表されていません。

104人の転任で赤穂市の人件費はいくら増える?

病院から市役所への転任では、会計上の人件費の負担先も変わります。

2026年7月時点の赤穂民報の報道では、104人が意向調査通り市役所へ転任した場合、病院事業会計から一般会計へ移る人件費は年間約7億円から8億円と試算されています。

かなり大きな金額です。

市役所側で既存の職員数をそのまま維持したまま104人を追加すれば、人員も人件費も大幅に膨らみます。

今回の会計年度任用職員の再任用見送りには、こうした人員規模の調整という側面もあります。

赤穂市はなぜ2027年度の事務職採用を見送る?

人員調整は会計年度任用職員だけではありません。

赤穂市は、病院から転任する職員の大半が事務職になることを受け、2027年度採用の事務職募集を見合わせる方針も示しています。

新しい正規職員を採用しながら病院から104人を受け入れると、市役所内で事務職が過剰になる可能性があるためです。

病院の指定管理移行が、市民病院内部だけではなく市役所の採用計画にまで影響していることが分かります。

赤穂市民病院に残る274人はどうなる?

意向調査で病院への残留を希望したのは274人です。

残留する場合も、現在の市職員という立場のままではありません。

一度市民病院を退職したうえで、指定管理者となる伯鳳会へ再就職する形になります。

赤穂市は伯鳳会へ再就職する職員について、現在と再就職後の給与や手当の差額を補う現給保障を3年間行う方針を示しています。

2026年7月時点の試算では、この現給保障に必要な予算は年間2億円余りとされています。

一方、残留を希望すれば無条件で採用が確定するという意味ではありません。

伯鳳会側は面談を行ったうえで採否を決める方針を示しています。

2027年4月から赤穂市民病院はどう変わる?

2027年4月1日は、赤穂市の地域医療にとって大きな転換点になります。

現在の赤穂市民病院は「公立赤穂中央市民病院」へ名称を変更します。

指定管理者は医療法人伯鳳会です。

赤穂中央病院との機能再編を進め、外来や急性期医療などを新病院側へ集約します。

赤穂市が示している方針では、病床数は399床とする計画です。

院内処方の導入や、選定療養費の見直しなども進められています。

病院名だけが変わるのではなく、運営主体、職員構成、病床、診療機能まで大規模に再編される予定です。

雇い止めとなる非正規職員への再就職支援はある?

仕事を失う可能性のある約130人にとって、最大の問題は2027年4月以降の生活です。

赤穂市では、再就職支援のための説明会も開催しています。

市はハローワークなどの関係機関と連携して支援する方針です。

また、病院から転任する職員だけで市役所に必要な人数を確保できなかった場合には、会計年度任用職員を改めて公募する可能性も示されています。

一度再任用を見送られた人が、その後別の募集へ応募できる可能性まで否定されているわけではありません。

ただ、再び採用される保証があるわけでもありません。

長く市役所で働いてきた職員にとって、大きな環境変化となるのは間違いないでしょう。

ネットでは雇い止めに賛否の声

今回の報道をめぐり、ネット上ではさまざまな意見が出ています。

比較的多いのが、会計年度任用職員は年度ごとの任用である以上、再任用されない可能性は制度上想定されているという意見です。

赤字が続く病院を改革し、市全体の人件費を考えれば、難しい判断だったのではないかという声もあります。

一方で、長年にわたり市役所の実務を支えてきた非正規職員が人員調整の対象になることへの疑問も少なくありません。

正規職員と同じ職場で経験を積み、業務に詳しい会計年度任用職員もいるため、一斉に人が入れ替わることで市民サービスや引き継ぎに影響が出るのではないかという指摘もあります。

正規か非正規かだけで能力を判断できるものではありません。

今回の人員再編では、市役所がこれまで蓄積されてきた業務経験をどのように引き継ぐのかも重要になりそうです。

赤穂市民病院の市役所異動と非正規130人雇い止めをまとめ

赤穂市で約130人の会計年度任用職員が再任用されない見通しとなった背景には、赤穂市民病院の大規模な経営改革があります。

赤穂市民病院は2027年4月1日から医療法人伯鳳会による指定管理へ移行します。

病院職員508人への最終意向調査では、274人が病院残留、104人が市役所への転任、130人が退職希望などとなりました。

そして、104人の正規職員を市役所で受け入れることに伴い、市役所で働く約550人の会計年度任用職員のうち、事務職を中心とする約130人について再任用を見送る方針となっています。

病院側の退職希望130人と、市役所側で再任用されない約130人は別の人たちです。

ここは今回のニュースを理解するうえで最も注意したいポイントでしょう。

背景には患者数の減少や医師・看護師不足、巨額の赤字など、市民病院が抱えてきた経営問題があります。

一方で、病院改革を進める過程で市役所の非正規職員に大きな影響が及ぶことになりました。

2027年4月の新体制までに、104人の具体的な配置や再就職支援、新病院の職員体制などがどのように固まっていくのか、今後も注目されそうです。