韓国で長く食べられてきた犬肉料理が、大きな転換点を迎えています。
2026年8月17日現在、韓国では2027年2月7日から食用目的の犬の飼育や増殖、食肉処理、流通、販売を禁止する制度への移行が進んでいます。
そこで気になるのが「韓国の犬肉料理には、いったい何の犬種が使われていたの?」という疑問です。
調べてみると、代表的な存在として挙げられるのが「ヌロンイ」と呼ばれる犬です。
ただし、ヌロンイを特定の純血犬種や「食用だけの犬種」と考えると、少し実態と違ってきます。
黄色系の毛を持つ在来の雑種犬を指すことが多く、韓国の犬肉産業で多く飼育されてきた犬のタイプという理解が近いでしょう。
一方、犬肉料理がなくなる理由も、法律だけでは説明できません。
若い世代を中心に犬を家族として考える意識が広がり、犬肉を求める人自体が減っています。
かつて犬肉取引で知られた牡丹市場でも、現在の主な客層は高齢者になり、多くの店舗が別の料理へ転換しています。
犬肉料理の犬種から、ポシンタンとは何なのか、禁止理由、法律の内容、現在の状況まで詳しく見ていきます。
韓国の犬肉料理は何の犬種?最も多く使われてきたヌロンイとは何か
韓国の犬肉料理について調べると、まず名前が出てくるのが「ヌロンイ」です。
韓国語では「누렁이」と書き、黄色や黄褐色の毛を持つ犬を表す名称として使われています。
英語圏の記事では「yellow dog」と説明されるケースもあります。
韓国の犬肉産業を扱ったドキュメンタリー作品の題名にも「Nureongi」が使われています。
韓国紙の取材では、ヌロンイについて「韓国で食肉目的に飼育されることの多かった一般的な雑種犬」と説明されています。
つまり、「犬肉料理は何の犬種なの?」という疑問への短い答えとしては、ヌロンイが代表格となります。
ただし、ここには重要な注意点があります。
犬肉料理に使われてきた犬が、すべてヌロンイだったわけではありません。
そのため「韓国ではヌロンイという一種類の犬だけを食べていた」と理解するのは正確ではないでしょう。
ヌロンイとはどんな犬?黄色い毛が特徴の食用犬と呼ばれてきた在来タイプ
ヌロンイという名前から、柴犬や秋田犬のような正式な犬種名を想像する人もいるかもしれません。
しかし実際には、黄色や黄褐色系の被毛を持つ在来の雑種犬を指す言葉として紹介されることがあります。
韓国メディアでも「common mixed-breed dog」と説明されており、一般的な雑種犬という位置づけです。
体格は比較的しっかりしており、犬肉を供給する農場で飼育されてきたため、「meat dog」と呼ばれることもありました。
しかし「ペット犬と食用犬は生物学的にまったく別の犬」という意味ではありません。
犬肉産業を取材した関係者からも、ペットとして飼育される犬と食肉目的で飼育される犬に本質的な違いはないとの指摘が出ています。
そのため、ヌロンイを説明するときは「食用犬という独立した種類」と断言するよりも、犬肉産業で多く飼育されてきた在来の犬タイプと考えた方がわかりやすいでしょう。
ヌロンイは正式な犬種なのか?食用専用犬種という説明で注意したいポイント
「ヌロンイは犬種なの?」という疑問も検索されやすいポイントです。
結論からいえば、一般的な意味での純血犬種と同じ感覚で捉えるのは慎重になった方がよさそうです。
ヌロンイという言葉自体は、黄色い犬という意味合いを持っています。
韓国国内で昔から見られた雑種犬や在来タイプの犬を示す名称として使われています。
その中で、体格のあるヌロンイが食肉目的の農場でも多く飼育されてきました。
この経緯から、海外ではヌロンイを「Korean meat dog」と紹介するケースがあります。
しかし、これは用途を強調した呼び方です。
「ヌロンイとして生まれた犬は必ず食用になる」という意味ではありません。
実際、犬肉農場から保護された犬が家庭で伴侶犬として暮らすケースもあります。
検索上は「犬種」という言葉が使われますが、記事ではこうした違いも押さえておく必要があります。
ヌロンイ以外の犬も犬肉料理に使われていた?犬種は一種類だけではない
では、犬肉料理に使われていたのはヌロンイだけなのでしょうか。
これについても、一種類だけだったと考えるのは難しいでしょう。
ヌロンイは代表的な存在ですが、「食用犬」と「ペット犬」を完全に別の生物として区別できるわけではありません。
犬肉産業を長期取材したドキュメンタリー制作者も、ペット犬と食肉目的で飼育される犬に本質的な違いはないと話しています。
さらに、2027年から適用される韓国の法律も特定の犬種だけを対象にはしていません。
法律では「食用を目的として犬を飼育・増殖したり、食肉処理したりする行為」そのものが禁止対象です。
つまり「ヌロンイなら禁止、ほかの犬種なら許される」という仕組みではありません。
犬種ではなく、食用を目的とする行為が基準になっています。
ポシンタンとは何?韓国で食べられてきた犬肉スープの正体
韓国の犬肉料理として最も知られているものの一つが「ポシンタン」です。
漢字では「補身湯」と書かれ、犬肉を野菜や香辛料などと煮込んだスープ料理として知られています。
地方や店によっては、ケジャングクやヨンヤンタンなど別の名称が使われることもありました。
かつては特に夏の滋養食という位置づけが強くありました。
日本で土用の丑の日にうなぎを食べる感覚に近いものとして紹介されることもあります。
ただし、韓国人全員が犬肉料理を食べていたわけではありません。
以前から犬肉を食べない人も多く、同じ世代の中でも好みや考え方には大きな違いがありました。
現在はその違いが、世代間でさらに大きくなっているようです。
韓国ではなぜ夏に犬肉料理を食べる?伏日ポンナルと滋養食文化の歴史
韓国の犬肉料理を理解するうえで欠かせない言葉が「伏日」です。
韓国では「ポンナル」と呼ばれ、一年で特に暑い時期に滋養のある料理を食べる習慣があります。
犬肉スープのポシンタンも、その代表的な料理の一つでした。
暑い時期に熱い料理を食べて体力を補うという考え方です。
犬肉だけでなく、参鶏湯なども代表的な滋養食として親しまれています。
ただ、2026年になると伏日そのものに対する意識も以前ほど強くありません。
ソウルの市場では、伏日でも客足が伸びず、犬肉料理以外の補養食を扱う店も苦戦していると報じられています。
食生活が豊かになり、特定の日に滋養食を食べなければならないという感覚が薄れていることも理由の一つとみられます。
韓国の犬肉禁止はいつから?2027年2月7日から禁止される行為を解説
韓国の犬肉禁止について、最も重要な日付は2027年2月7日です。
韓国の国家法令情報センターでは、犬の食用目的の飼育、増殖、食肉処理、流通、販売を禁止する第5条について、2027年2月7日施行と明記されています。
禁止対象となる主な行為は次の通りです。
- 食用目的で犬を飼育すること
- 食用目的で犬を増殖すること
- 食用目的で犬を食肉処理すること
- 食用目的の犬や犬肉を流通させること
- 犬を原料にした食品を販売すること
法律自体は2024年に成立しましたが、関連業者が廃業や転業を進められるよう猶予期間が設けられました。
その猶予期間が終わるのが2027年2月7日というわけです。
犬肉を食べるだけでも違法になる?犬肉禁止法の対象と罰則はどうなっている
「2027年から韓国で犬肉を食べたら逮捕されるの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
ここは誤解されやすいポイントです。
韓国の特別法を確認すると、禁止されているのは食用目的の飼育、増殖、食肉処理、流通、販売です。
食べる行為そのものを直接処罰する条文は確認できません。
一方、供給側には明確な罰則があります。
食用目的で犬を食肉処理した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金が規定されています。
食用目的で飼育や増殖をした場合は、2年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金です。
犬肉や犬を原料とした食品を流通・販売した場合も、同様に2年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金が規定されています。
そのため、制度の中心は消費者を処罰することより、犬肉が市場へ供給される仕組み自体を終わらせることにあると考えられます。
韓国はなぜ犬肉を禁止することになった?犬は家族へ変わった価値観が大きな理由
韓国で犬肉が禁止される理由は、一つではありません。
大きな背景にあるのが、犬に対する社会の見方の変化です。
以前はペットを「愛玩動物」と表現することが多かった韓国でも、近年は「伴侶動物」という言葉が広がっています。
犬や猫を家族の一員と考える家庭が増え、若い世代を中心に犬肉への抵抗感が強くなりました。
ロイターが紹介した2024年の調査では、回答者の90%以上が今後犬肉を食べる意思がないと回答しました。
さらに80%以上が犬肉禁止を支持していました。
海外からの批判だけで法律が成立したというより、韓国国内の意識変化が大きくなった結果と見る方が実態に近そうです。
犬肉を食べる韓国人は現在どれくらい?若者と高齢者で大きく異なる意識
現在も韓国で犬肉料理を食べる人はいます。
しかし、その中心は高齢者になっています。
2026年8月にロイターが牡丹市場を取材した際、ポシンタンを注文していた客の多くは高齢者でした。
中には20代の頃から犬肉料理を食べ続けてきたという人もいます。
長年の食習慣であるため、禁止に寂しさを感じる人がいるのも事実です。
その一方で、若い世代では犬をペットではなく家族の一員として考える意識が強くなっています。
犬肉料理そのものを食べた経験がない若者も珍しくありません。
添付された報道でも、現在犬肉を求めて店を訪れる客の多くが高齢者で、若者とは価値観が異なる様子が伝えられています。
今回の犬肉禁止は、食文化の問題であると同時に、韓国社会の世代交代を象徴する出来事ともいえそうです。
韓国の犬肉農場は現在どうなった?1537カ所から272カ所まで減少した背景
法律の本格施行を待たず、犬肉産業はすでに急速に縮小しています。
韓国農林畜産食品部によると、登録された犬飼育農場は当初1537カ所ありました。
2026年5月時点では1265カ所が営業を終了し、残っている農場は272カ所です。
閉鎖率は約82%に達しています。
政府は2027年2月の全面移行に向け、残る農場への立ち入り確認や転業支援を進めています。
すでに閉鎖した農場についても、新たな食用犬の繁殖が始まっていないか確認する方針です。
この数字を見る限り、犬肉文化は法律が適用される日を境に突然消えるわけではありません。
数年をかけて産業そのものが段階的に縮小していることがわかります。
牡丹市場の犬肉料理店は現在どうなった?最後の伏日と黒ヤギ料理への業態転換
犬肉料理の現在を象徴する場所の一つが、京畿道城南市の牡丹市場です。
かつて牡丹市場は犬肉取引の中心地として知られていました。
伏日になると大勢の客が訪れ、犬肉料理店が書き入れ時を迎えていた時代もあります。
しかし2026年になると、景色は大きく変わりました。
犬肉を扱う店そのものが減り、多くの店舗が黒ヤギ料理など別の商品へ転換しています。
添付された報道では、1990年代に一日240人分を販売した店でも、かつての伏日に比べ売り上げが70%以上減ったと紹介されています。
供給する農場が減ったことで犬肉価格も上昇しています。
店側にとっては需要減少と仕入れ価格上昇が同時に進んでいる状態です。
黒ヤギ料理への転換も進められていますが、長年犬肉を扱ってきた店にとって簡単な変化ではないようです。
なぜ犬はダメで牛・豚・鶏はいい?犬肉禁止をめぐり再燃する食文化と倫理の線引き
犬肉禁止のニュースが出るたびに繰り返される疑問があります。
「犬がダメなら、なぜ牛や豚や鶏は食べていいの?」というものです。
これは今回の記事に寄せられたコメントでも特に目立った論点でした。
犬肉を自分では食べたくない一方、特定の動物だけを禁止する線引きに疑問を持つ意見があります。
反対に、犬は長い時間をかけて伴侶動物としての立場が強まったため、社会が新しい線引きを作ることは自然だという考え方もあります。
この問題に唯一の答えがあるわけではありません。
何を食用動物と考えるのかは、国や宗教、時代、生活環境によって変化します。
韓国では、その境界線が犬を食用としない方向へ大きく動いたということでしょう。
韓国の犬肉禁止と日本のクジラ・イルカ・馬肉は何が違う?食文化をめぐる議論を比較
日本から韓国の犬肉禁止を見ると、クジラやイルカ、馬肉などを思い浮かべる人も多いようです。
実際、今回のニュースへの反応でも、犬肉と日本の鯨食や馬肉を比較する意見が数多く見られました。
ただし、それぞれ歴史や生産方法、法律、社会的位置づけが違います。
そのため「犬肉と鯨肉はまったく同じ問題」と考えるのも適切ではありません。
共通しているのは、食文化が固定されたものではないという点でしょう。
ある世代にとって普通だった食べ物が、次の世代ではほとんど食べられなくなることがあります。
反対に、それまで一般的でなかった食べ物が広く普及することもあります。
韓国の犬肉をめぐる変化は、食文化と社会的価値観の関係を考える事例の一つといえます。
北朝鮮ではなぜ現在も犬肉スープを食べる?禁止へ向かう韓国との大きな違い
同じ朝鮮半島でも、北朝鮮では状況が大きく異なっています。
2026年8月にも、北朝鮮メディアは暑さ対策の伝統食として犬肉スープを紹介しています。
北朝鮮では犬肉を「タンコギ」と呼ぶ表現もあり、夏の滋養食として扱われています。
さらに2026年には、犬肉料理のコンテストが開催されたことも報じられました。
韓国が2027年の終息へ向かっている一方、北朝鮮では現在も伝統料理として紹介されていることになります。
同じ食文化を共有してきた地域でも、社会制度や価値観によって現在の扱いが大きく分かれている点は興味深いところです。
韓国の犬肉料理は2027年以降どうなる?ポシンタン文化と犬肉店の今後
2027年2月7日以降、韓国では食用目的で犬を飼育、増殖、食肉処理する行為が禁止されます。
犬肉や犬を原料とした食品の流通と販売も禁止対象です。
そのため、現在のような形でポシンタン専門店が合法的に犬肉を仕入れて販売することはできなくなります。
すでに多くの店が廃業したり、黒ヤギや別の料理を扱う店へ変わったりしています。
犬肉料理の犬種として検索されるヌロンイも、この変化とともに「食用犬」という位置づけから離れていくことになりそうです。
今回調べてみると、韓国の犬肉料理に多く使われてきた犬として代表的なのはヌロンイでした。
ただし、ヌロンイは「犬肉専用に存在する特別な純血犬種」と単純に説明できる存在ではありません。
黄色系の被毛を持つ在来の雑種犬が、犬肉産業で多く飼育されてきたという理解がより正確でしょう。
そして犬肉文化が終わりへ向かっている最大の理由も、法律だけではありません。
犬を家族として暮らす人が増え、若者を中心に「犬は食べる動物ではない」という価値観が広がりました。
その結果、需要そのものが法律の本格施行より先に縮小しています。
高齢者にとっては長年親しんできた夏の味が消える寂しさがあります。
一方、若い世代にとっては犬が家族の一員という考えが当たり前になりつつあります。
2026年の「最後の夏」は、犬肉料理の終わりだけを意味するものではありません。
韓国社会で「犬とはどんな存在なのか」という答えそのものが変わったことを示す出来事とみられます。
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